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【映画】七つの会議 レビュー ※ネタバレ注意

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「わざわざ映画館の大スクリーンで見るべき映画なのか?」

映画を観る時によく言われることである。
特に、テレビ局の影響が色濃い映画は、そう揶揄されることが多い。

「七つの会議」は、TBSの福澤克維監督と作家・池井戸潤コンビによる
ヒットドラマの延長線上に位置する映画である。
それでも、私は思う。

「七つの会議は映画館の大スクリーンで見るべきだ!」

但し、「半沢直樹」や「下町ロケット」など、福澤監督の作品を見たことの無い人にはあまりピンとこないかも知れない。

なぜなら「七つの会議」は、「顔芸格闘選手権大会」を楽しむ映画だからだ。 

あらすじ

都内にある中堅メーカー・東京建電。営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)はどこの会社にもいる、所謂“ぐうたら社員”。

トップセールスマンである課長・坂戸宣彦(片岡愛之助)からは

その怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最低限しか果たさず、

定例の営業会議では傍観しているのみ。

絶対的な存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果主義の方針の元で部員が寝る間を惜しんで働く中、一人飄々と日々を送っていた。

ある日突然、社内で起こった坂戸のパワハラ騒動。そして、下された異動処分。訴えた当事者は年上の部下、八角だった。

北川の信頼も厚いエース・坂戸に対するパワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。

そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島万二(及川光博)が新課長として着任する。会社の“顔”である一課で、成績を上げられず、場違いすら感じる原島。

誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。

だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた・・・。

         (C)2019映画「七つの会議」製作委員会 公式HPより

選手(キャスト)紹介

野村萬斎 
福田組初参加。一見、無表情だが相手を追い込む険しい顔が、主役なのにメッチャ悪人顔。

香川照之 
常連、悪役上等の顔芸チャンピオン。この人無しでは大会が成り立たない。

及川光博
今回は良い人設定なので悪人顔は無かったが、困った顔やおとぼけ顔などを披露。

片岡愛之助
前半に失脚するまで、部下を叱責する怒り顔を発揮。ただ、今回は被害者的な側面もあったので、愛之助氏が得意とする悪だくみ顔が見られなかったのが残念。

藤森慎吾
役が凄くハマっていた。顔芸も良かったが個人的には、あと2割増しぐらい協調しても良かったと思う。

岡田浩暉
福田組小悪党担当。登場から左遷されるまで一貫して悪人顔。

鹿賀丈史
舞台出身で存在感ありまくりの顔立ち。そんなに作らなくても怖い顔が出来る。

北大路欣也
ストーリー上の最高権力者。顔芸というよりは、顔面力の圧が凄い。

その他、役所広司、立川談春、春風亭昇太、音尾琢真など福田組に縁のある俳優が、たくさん出演している。

そんな濃い~い面々が、とにかくこれでもか!って感じで顔芸を繰り広げる。
スクリーンに大きく映し出される顔は、女優さんだったら嫌がる位のどアップだ!
大スクリーンで観ると、悪人顔がより醜悪に見えたり、
香川照之の素晴らしい表情筋の動きに感心できる。

今回の「顔芸格闘選手権大会」のチャンピオンだが、
やはり香川照之の防衛だろう。
最後の御前会議で追い込まれた時の鹿賀丈史や、立川談春を追い詰める野村萬斎、
ドーナツ泥棒の藤森慎吾なども良かったが、香川照之の号泣シーンにやられた。

香川は部下の叱責シーンや不正がバレそうなシーンの顔芸も見事だったが、
物語の後半、自室でひとり号泣する顔芸は
「ズルい!」としか言いようがない。(褒めてます)

顔芸のことばかり書いているが、ストーリーや構成も充分楽しめた。

 

 「七つの会議」は企業時代劇

企業の不正や隠ぺいなど現代社会のリアルや、
組織の論理や上司の無責任などのサラリーマンあるあるを
ストーリーに組み入れた「七つの会議」。
顔芸やたっぷりと溜めのあるセリフまわしが大仰で、時代劇チックである。
それが良い。こんな話、非現実っぽく作らないとやり切れない。

ただ、勧善懲悪パターンで9割方正義が成されたエンディング、
野村萬斎演じる主人公は「組織の不正は無くならない。でも、不正が少なくなれば…」と言う。
この辺りのさじ加減が絶妙だ。大げさな時代劇を見せられたのに観客は、
現実社会を捉えた映画を観たような気にもなれる。

「七つの会議」は、ミステリーとしても楽しめた。
野村萬斎演じるグータラ社員の謎や、会社を巡る不穏な空気。
探偵役の及川光博と朝倉あきが、途中まで観客目線で謎解きに挑む。
この二人のポンコツぶりが、ほのぼのとしていて良かった。
黒幕に関するミスリードには、まんまとだまされた。

また、登場人物がそれぞれの立場で、モノローグを語りながらシーンを展開していくという手法は、あり手ではあるが、物語のテンポとして良かった。

福澤作品のファンじゃなくても楽しめる作品であると思う。