けるんエンタメ公会堂

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【演劇】朗読劇「ヴォイサリオン・Mr.Prisoner」上川隆也×林原めぐみ×山寺宏一 プロの技にヤラレました!

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シアタークリエで開催されている
「VOICARION Ⅳ~ヴォイサリオン Mr.Prisoner」に行ってきました。

「いや~、今まで朗読劇をナメてました。申し訳ございません。」
そんな言葉を言いたくなるほどヤラレました。

朗読と朗読劇の違い

過去に舞台で行われる朗読を観に行ったことはあります。

俳優さんが行っているモノから、
アナウンサーやナレーターなど声の仕事をしている人のモノまで。

それなりに良かった記憶もあるんですが、
やはりエンタメとしては演劇を観に行く方が…
なんて思ってました。

今回の舞台を観て分かりました。
今まで私が観ていたのは「朗読」であって、
「朗読劇」では無かったんだと。

あらすじ

19世紀 英国

ロンドン塔(Tower of London)地下3階には

光を通さない分厚い鉄扉の独居房があった

そこには一人の囚人が幽閉されていて

囚人の周囲には、不思議な指示が出されていたという・・・

“牢屋番は耳の不自由なものにせよ”

囚人番号252号・・・

彼は「絶対に声を聞いてはならない囚人」と呼ばれていた・・・

(C)Toho Co., Ltd. 公式サイトより

 

キャスト

上川隆也
チャールズ・ディケンズ/クライヴ・ヘイティングス卿

林原めぐみ
レス

山寺宏一
囚人252号(エドワード・ホークウッド伯爵)ほか9役

 

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 開場時間にシアタークリエのホワイエに入ると、
たくさんのお客さんであふれています。
思っていたより男性が多い印象。

小腹が空いていたので、
東宝系の劇場ではポピュラーな
「天のや」のたまごサンドを購入します。

「天のや」のたまごサンドは
だし巻き玉子を挟んだスタイル。
私は関西出身なんで、
このタイプのたまごサンドを食べると
懐かしい気持ちになれます。

商品紹介 | 天のや 玉子サンド|テイクアウト専門店

今回の席はサイドながら前方列。
上川さんの立ち位置の前あたりです。

席に着いて私が思ったのは、
「この席、プレッシャーだなあ…、
絶対に寝ないようにしないと…。」でした。

そう、この時点ではまだ「朗読劇」ということで、
そんな心配をしていました。

物語は上川さん演じる作家・チャールズ・ディケンズが、
“絶対に声を聞いてはならない囚人”の話を聞くために、
林原さん演じるレスを訪ねるところから始まります。

訪ねると言っても、
朗読劇ですから林原さんが上手、
上川さんが下手で板付き。
照明の有無でシーンの示唆をするようになっています。

上川さんと林原さんの掛け合いが始まります。
上川さんはさすが俳優というか、
もう全身を使って芝居をしている感じがよく分かります。

上川さんの前なので顔がよく見えますが、
目線の動きなどもセリフに合わせて動かし表情を作っています。

林原さんは逆サイドなので表情は分かりませんが、
聞こえてくる声から大人の女性で、
淡々と受け答えをしているが冷淡ではなく
聡明な女性を演じているという印象を受けます。

そんな2人のやり取りが約15分続きました。

と、ここで気が付きました。
山寺さん15分間微動だにせず。

舞台上でひときわ高い位置に板付いている山寺さんは、
オープニングの2人の芝居を邪魔しないようとじっとしていました。

囚人252号の声は?

開始から約15分経って、
いよいよロンドン塔の地下監獄に幽閉された囚人252号の登場。

「絶対に声を聞いてはならない囚人」とは
一体どんな人物なのか?

ミステリー好きにはたまらない設定です。

囚人252号の声は山寺ボイスのイケボでした。
山寺さんは囚人を始め、
その他9役を様々な声で演じ分けるんだとか。

まず、囚人252号は牢獄番の老人が死んで、
扉の向こうにいるのが孫のレスだと分かり、
老人の声色を使ってレスを翻弄します。

「絶対に声を聞いてはならない囚人」とは
レインボーボイスで人々を騙す囚人で、
彼の犯罪譚がいろいろと語られる舞台。

この時点ではそんな展開を予想していました。

囚人と少女の心の交流

囚人252号と対峙するレスは、
13歳の少女の設定です。

この少女・レスを演じる林原さんにヤラレました。
「綾波レイ」や「灰原哀」を彷彿させる
無感情っぽいけど心の機微が感じ取れる少女、
囚人と親密度が増して見せる表情など…。

プロフェッショナルの神髄を
見せてもらったような気がします。

物語は囚人252号ことエドワード・ホークウッド伯爵が、
人生に有意義な勉強をレスに教えるという形で進みます。

この物語の核は、囚人と少女の心の交流でした。

山寺・林原両氏の掛け合いにどんどん惹き込まれます。

上川隆也という俳優

テレビや映画でとぼけた刑事役などを
演じることもある上川さん。

が、上川さんのイメージ言えば、
やはり「実直」や「真面目」という感じでしょうか?

ですから、彼の演じるディケンズは
とっても誠実な印象を受けます。

一方、クライヴ・ヘイティングス卿は
本作では悪役ポジションですが、
親友の死に責任を感じて、
真実を追求する役人です。

レスに対して意地悪なセリフもありますが、
そこまで悪い人という感じはしません。
(※最後は良い人でした。)

両役とも、上川さんの持つ雰囲気が
役柄にフィットしていました。

また、私は上川さんのすぐ前に座っていたので見ちゃいました。

山寺・林原両氏の素晴らしい掛け合いのあと、
暗転のなかスタンバイする上川さんが
そっと目尻を拭う様子を…。

アニメ好きの同志として、
ますます上川さんが好きになりました。

原作と音楽

Mr.Prisonerの舞台はイギリスのロンドン塔です。

私はイギリスには古典として、
こういう物語があるんだなと思って観ていました。
ところが、帰宅してパンフレットを見ると、
原作・脚本共に演出の藤沢文翁氏の名前が書いてあります。

正直驚きました。
ロンドン塔の不気味なイメージや空気感みたいなモノが、
あまりにもストレートに伝わってくるので、
日本人の創作だとは思っていませんでしたから。

音楽も良かったです。
シーンのイメージを増幅する旋律が演奏され、
より想像力豊かに観ることが出来ました。

先生(囚人)と少女の別れのシーン。
山寺さんと林原さんの掛け合いはもちろん、
演奏されていた曲が良かったです。

さいごに

とにかく、朗読劇でこんなに感情が揺さぶられるんだなと思いました。

いやむしろ「朗読劇だからこそ!」かも知れません。

演出制作の皆さん、演者の皆さんに脱帽です。

 

2020年2月。次回のヴォイサリオンⅤの上演が決定しています。

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 今度は、宮野真守氏。これチケットが取れなくなるフラグ?!