けるんエンタメ公会堂

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【演劇】舞台「山犬」劇団鹿殺し×AKB48×コンドルズ 異色コラボのホラーミステリー

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劇団鹿殺し。
随分と物騒な名前の劇団名です。
そんな「鹿殺し」の舞台「山犬」を観るために
サンシャイン劇場に行ってきました。

ちなみに、「劇団鹿殺し」は
名称から受ける過激なイメージの舞台ではなく、
歌あり踊りありのエンタメ性の高い劇団です。

今回の「山犬」はホラーミステリー。
初演、再演とブラッシュアップされてきた本作は、
男女の設定を入れ替え更に進化した作品になっているとのことです。

あらすじ

「私たちが埋めたタイムカプセルを一緒に掘りに行きませんか?

 ハマダマコト」

同窓会の前日に届いた一通の手紙。

しかし、誰もその名前に記憶がない。

10年ぶりに再会した元コーラス部の生徒たちと先生は、

手紙に導かれてタイムカプセルを掘るため、学校の裏山へと向かう。

タイムカプセルの中には、骨とハマダマコトの名札が入っていた。

その時、何者かに襲われて山小屋に監禁されてしまう。

そして、始まる記憶探しのサバイバルゲーム。

「シヌキデオモイダセ」 誰かが過去を思い出す度、配給される食糧……

果たして彼女たちは解放されるのか、

それとも恐怖と空腹に支配されてしまうのか。

(C)オフィス鹿 ネルケプランニング 公演チラシより

主なキャスト

岩立沙穂(AKB48)

太田奈緒(AKB48)

谷口めぐ(AKB48)

オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)

山本光二郎(コンドルズ)

丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

初日のサンシャイン劇場

ミステリー要素もあるということで、
情報をできるだけ遮断して
サンシャイン劇場に向かいました。

ロビー開場の時間に入場すると、
オッサン率メガネ率高め。
これならオタク中年の私も、
シアタークリエなどと違い、
すっと風景に溶け込めます。

AKB48のことは殆んど分かりませんが、
「久しぶり!」と声を掛ければ、誰かに間違われ
そのまま世間話に発展しそうな雰囲気さえ感じます。

 

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舞台公演にしてはグッズの種類が多めです。
オタク需要があるからでしょうか?
とりあえず、パンフレットを購入。

40分ほど待って客席へ。
座席はセンター通路よりやや後方。
傾斜があるので前の人も気にならず、
ステージ全体が見渡せます。

 

↓以下、思いっきりネタバレです。

 

開演時間の午後7時になりました。
約20年前CMで話題になったゲーム「ピクミン」の愛の歌が流れます。

「引っこ抜かれて、あなただけについて行く。
 今日も運ぶ、戦う、増える、そして食べられる。」

切ないメロディーと怖い歌詞は、
これから始まる舞台の怖さを引き立てます。

続いて、不気味な効果音と照明の中、
キャストたちが犬の演技で現れます。
四つんばいで争う犬たち。
そんなことはないと思いますが、
このままセリフも無くシュールな舞台が続いたらどうしよう?
なんて変な心配もしました。

場面変わって、オレノグラフィティ演じる服部先生のシーン。
横川高校の元教師でコーラス部の元顧問。
10年前交通事故に遭い、教師をやめる。
「ハマダマコト」からの手紙で同窓会に参加するために帰郷。
というミステリーの王道チックな展開で本編が始まります。

その後、「ハマダマコト」と思しき人物に嵌められ、
服部先生と元コーラス部の生徒2人が監禁されるという
シンプルなストーリーなんですが、
色々と気になるポイント(謎)が!

山犬の存在

山本光二郎演じる山犬は、見事に犬です。
心の声はナレーションで流れますが、
セリフは殆んどありません。
最初は「ハマダマコト」のメタファーとして
山犬が存在していると思っていました。

ところが、物語の中盤で岩立沙穂演じる
「ハマダマコト」が登場します。
山犬はハマダマコトに命を助けられ、
子分(忠犬)になります。

ただ、ここで更なる疑問が!
「ハマダマコトは人間なのか?犬なのか?」

演出の妙にまんまとハマっている私でした。

AKB48の女優3人

演技という面では発展途上だと思いますが、
3人とも熱演でした。

谷口めぐは、キャバクラ嬢で元コーラス部の部長。
服部先生のことが好き。

初日の緊張があったのでしょうか?
セリフ量も結構あるので、
間違えないようにとの思いから、
セリフが早口過ぎて少し聞き取りにくかったです。
後半は落ち着きを取り戻して良くなりました。

太田奈緒は、居酒屋のバイトリーダー。
表面化していなかったのですが、
谷口演じる部長の直子を恨んでいた。

彼女は3人の中で、いちばん落ち着いて
芝居をしていたように見えました。
監禁後の内面をさらけ出す芝居や、
狂気の演技は特に良かったです。

岩立沙穂は、物語のキーマン「ハマダマコト」。

不気味さよりキュートさが勝っている感じの演技。
ソロ曲を歌っての自虐セリフがツボでした。

その他、台車カゴを使ったセット演出や、
不快で耳障りな効果音も世界観の構築として良かったです。

ミステリー好きの???

以下、あえての苦言やミステリーとしての疑問です。

  • ハマダマコトが山犬を助けるシーンで、
    コックをボコボコにしているのに、
    その後、食堂の裏でカレーをもらうシーンはおかしいのでは?
    コックが変装している。
    または、背後から一発殴る位であれば、
    「同一人物と認識していない」と言われても理解できますが。
  • ハマダマコトの双子・黒幕設定は無くても良かったのでは?
    採用するのであれば、扱いが中途半端。
    最後に「祝福」の合唱で終わるのならば、
    観客はTVドラマみたいな納得感や整合性を求めていない気がします。
  • 監禁劇らしさが薄かったです。
    過去シーンとカットバックするので仕方ないと思いますが、
    監禁されてから狂気に変わるまでが急でした。

さいごに

山犬はホラーミステリーですが、
考えさせられるシーンもたくさんあります。

高校時代のことを思い出したり、
人間関係や本質について考えたり、
ペットのことを考えたりと…。
私にとっては、そんなキッカケを与えてくれる舞台でした。

現公演は3月10日まで。
再演があったら、さらに進化した「山犬」を観たいと思います。